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タイトル: IPO前後の価格形成
その他のタイトル: Pricing around Japanese IPOs
著者: 俊野, 雅司
Toshino, Masashi
発行日: 2022年12月20日
出版者: 成蹊大学経済経営学会
抄録: 日本の株式市場では,1997年に公開価格の決定方法が入札方式からブックビルディング(BB)方式へ変更後は,マザーズなどの新興市場へのIPO銘柄を中心に顕著なアンダープライシング(過小値付け)が見られた。最初に投資家へ提示される想定発行価格がIPOディスカウントなどの影響で低めに設定され,これが初期値として機能するアンカリングが生じている可能性がある。また,機関投資家へのロードショー後に設定される仮条件の上限値で9割以上のIPO銘柄の公開価格が決定される傾向が見られ,上限値を超えて公開価格を決定できないわが国特有のIPO制度の問題点も確認できた。IPO後の中長期的な価格形成については,入札時にはアンダーパフォーマンスが見られたが,BB方式時には,本則市場へのIPO銘柄を中心にむしろオーバーパフォーマンスが見られた。IPO後5年後の累積相対株価水準を基準にして公開価格を逆算したところ,入札時には公開価格が割高であったにもかかわらず投資家の楽観的期待が原因で初値が一層上昇した状況,BB方式時には公開価格が顕著に割安で過小値付けが生じていた状況と整合的な結果が見られた。過小値付けは,資金調達額の目減りという形で発行企業にとって不利に働く。そのため,適正な公開価格を導く意義の再確認を行うとともに,想定発行価格を決定する際のIPOディスカウントの廃止や仮条件の上下限値を超える水準での公開価格決定の解禁などに関する制度改善の必要性については,十分に議論を行うことが望ましい。
URI: http://hdl.handle.net/10928/1539
出現コレクション:第53巻第2号

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